AERA STYLE MAGAZINE × L.L.Bean
Life with L.L.Bean
L.L.Beanのある暮らし
軽井沢での暮らしと、新たな挑戦
渡邉 剛
「畑をはじめて3年。今年からこの場所を借りていますが、まだまだ試行錯誤の最中です。土壌にできるだけダメージがないように、作物を育てる際には自然由来のものだけを使用するようにしています。」
モデルの渡邉 剛さんは今年3月に軽井沢に居を構え、300坪の畑で自然農を実践している。人力で土壌を耕し、種や苗を植え、世話をする……。手間暇をかけながら、どんな作物がこの場所に合うのか未知数ななかで、自然と向き合い奮闘する日々だ。

夢が芽生えた軽井沢での暮らし
大学を卒業後、システムエンジニアとして働いた後にモデルの道に進んだ。日本のみならず海外のメディアでも活躍するなど、順調にキャリアを築いてきたが、40代半ばにして大きなシフトチェンジをした。妻のみのりさん、一人娘の琉衣ちゃん、そしてポメラニアンのこはくちゃんと共に家族で移住。二拠点ではなく、東京から生活の基盤をすっかり移して、新たな挑戦をはじめたのである。

「今は朝5時には起きて近くの保養所へ30〜40人前の料理を作りに向かいます。その後、イタリアンレストランで料理修業も兼ねたサポートが待っています。時間が許せば畑で農作業をして帰宅。今度は家族のための食事の準備に取り掛かる……そんな毎日です。」
将来は安心安全な料理と自家焙煎のコーヒーを提供する店を開きたいと、畑だけでなく毎日がトライ&エラーの連続という暮らしだ。


「年齢を重ねて40代も半ばとなったとき、ずっと興味をもっていた田舎暮らしや農業を人生のメインにおいていこうと思いました。変わるなら今だと。経験があるわけではないので、すべてが手探りです。もっと安易な道があるんだと思いますが、何事も経験から学んでいきたいと思う性分のようで……。だからこそ学び多き日々を送れていて、ありがたいです。」
こう話す渡邉さんは常に手を動かし、万事に骨惜しみをしない。ケミカルに頼らず人力で世話をする畑の野菜のみならず。香味野菜と鳥の骨から出汁を取るところからスープを作り、畑の野菜を美しいサラダに変え、香ばしいパンを焼く。そして無農薬の豆を一粒一粒手で選定し、自家焙煎してネルドリップ。ひとつの物語のように変化を味わえる、香り高いコーヒーを淹れるのだ。

いいものは育てながら長く愛用したい
「自然派」「丁寧な暮らし」「こだわり」というような言葉で表現されるライフスタイルは数多く露出している。しかし彼の場合はそれとは異なっていて、本格派、根のある暮らし、実直、妥協無しというような言葉が似合う。たとえ時間がかかろうとも、不器用であろうとも、納得いく形をイチから自分で見つけ出していくようだ。このようなスタイルは、若い頃から確立していたといい、現在はそれを自然のなかで実践している。
「例えばモノ選びでも、いっときの楽しさのために手に入れるようなことはほとんどないんです。じっくり付き合っていきたい、(モノを)育てていきたいと思うので、自ずと上質で飽きがこないデザインを選びます。そして今は自然と付き合っている時間が長いので、やはり機能性なども重要視しますね。長い付き合いになるものですからきちんと調べてから買い物します。自分にとって数は重要ではありません。一番なモノがあれば他はいらないと思っています。」


そんなライフスタイルは、軽井沢の自宅の様子が饒舌に物語る。まるで洗練されたホテルの客室のような上質な家具やプロダクツが印象的にレイアウトされたミニマムな空間だ。そこでイチから作り上げる料理やコーヒー……、厳選されたモノたちと森の木々に囲まれての暮らしは、彼のストイックでハードな日々に、家族とともに憩いを与えているのではないだろうか。

モデルだからこそ見えた、いいモノの条件
モデルとして第一線で活躍してきたということは、春夏と秋冬という2シーズンのコレクションを中心に、トレンドを追いかけスタイルを提案するというファッションの世界にいたということでもある。渡邉さんの流儀とはリンクしないところも多いのではないだろうか。
「ファッションの世界で膨大なモノを見てきたからこそ、自分が本当に好きなもの、自分に合っているものに自覚的になったというところはあると思います。そういう意味ではL.L.Beanのアイテムたちは、僕の考え方との親和性が高い気がしました。」


飽きがこないデザイン、日々使っていても不自由さを感じない機能性そして長く使える耐久性。「モノとはずっと付き合いたい」という渡邉さんが求める条件は、L.L.Beanのアイテムたちの個性とたしかに符号する。
その代表的な存在ともいえるのが、フィールド・コートだ。防寒性や動きやすさを兼ね備えたシンプルなデザインのハーフコートは、今年で100年という節目を迎える。歴史を刻みながら、変わらず多くの人に愛されてきたブランドアイコンのアイテムのひとつである。

「好きなものはメンテナンスして愛着を持ちながら、育てていきたいんです。フィールド・コートをはじめ、ビーン・ブーツやボート・アンド・トートなど、長年愛されているアイテムに宿る個性と、自分の考え方には共通するものがあるように感じています。それに今の暮らしには、リアルに重宝するシーンばかりですから。」
かつて東京で生活していた頃は、「カジュアルが似合わない」と評されることも少なくなかったという。しかし拠点を移し自然の中で試行錯誤する生活を続けるなかで、周囲から「雰囲気が変わった」と言われることも。リアリティーは、言葉にせずとも他者に説得力を与える。渡邉さんの孤軍奮闘はいくつもの言葉を重ねるよりも、人に訴えるものがあるのだろう。


「まずはとにかく、やってみる。それを続けていたら畑の作業もサポートしてくれる人が現れました。集中して本気で取り組めば、道は拓けてくるんだと思います。いつか、畑や料理といった今の田舎暮らしの主体とモデルの世界を繋げたいというビジョンをもっています。今はまだ実現できていませんが、偽りなく取り組んだ先にそういう未来があればと願っているんです。」
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