故郷の大地に根を張って Outdoorに生きる
農家 皆川枝美

畑仕事の手を止めて、一息つく。
豆畑の向こうにそびえるのは車山。
空に雲がたなびき、風が頬をなでる。
360度パノラマの自然に包まれ、大地とともに生きる。

長野県諏訪郡原村。
八ヶ岳を望むこの地に生まれ育ち、この地に戻って根を張った。

高校時代までを過ごし、大学で和歌山県へ。
昼夜を問わず働いていたが、体調を崩したことなどから再び原村に戻ってきた。
実家の農業を手伝ううち、探し求めていた「天職」だと気づいた。
高原野菜の産地として知られるこの地で、丁寧に大地の恵みを作り、食べ、暮らす。
Outdoorそのもの――とも言える日常と、それに至る道のりをたどる。

農業は「天職」自分を変えてしなやかに生きる

「物心ついたときから、自分の使命を探していました。自分が生きている意味をずっと考えていたときに少しずつ気づきと学びがあって、何か『人に与える』仕事が向いていることには気づいたんです」

最終的な結論は、幼い頃から身近にある農業だった。

種をまき、苗を育て、収穫する。消費者に届ける――。
それら全ては、自然の恵みを誰かにおすそわけする営みだ。手がける作物は、いずれも農薬を使わないニンニクと14種類の豆。仕事のペースを決めるのは自分次第、というのも性分に合っていた。「農家は天職。こんなに自分に向いている仕事はないと思っているんです。苦しいとか大変とかを感じたことは一度もありません」。澄んだ空気を胸いっぱいに、思い通りの人生を満喫している。

種をまき、苗を育て、収穫する。消費者に届ける――。
それら全ては、自然の恵みを誰かにおすそわけする営みだ。手がける作物は、いずれも農薬を使わないニンニクと14種類の豆。仕事のペースを決めるのは自分次第、というのも性分に合っていた。「農家は天職。こんなに自分に向いている仕事はないと思っているんです。苦しいとか大変とかを感じたことは一度もありません」。澄んだ空気を胸いっぱいに、思い通りの人生を満喫している。

ただ、自然は自分の思い通りにはいかない。露地栽培は天候に左右されるのが宿命。たとえばお盆に長雨が来る予報を聞いたら、降らないうちにありったけの人手を集めて小豆を収穫する。それでも取りきれず長雨にさらされ続けた残りは、もう廃棄するしかない。食べられないし、売り物にもならない。

「そういうときはやっぱり、泣きますよね。自分の判断はどうだったのか、無理をすればよかったのか…とか。でも自然って私たちはコントロールできないので、むしろ自然を見て自分たちが合わせていく生き方でないと。農家をやりたいのなら自分が合わせるのが筋かなと思っています」

ただ、自然は自分の思い通りにはいかない。露地栽培は天候に左右されるのが宿命。たとえばお盆に長雨が来る予報を聞いたら、降らないうちにありったけの人手を集めて小豆を収穫する。それでも取りきれず長雨にさらされ続けた残りは、もう廃棄するしかない。食べられないし、売り物にもならない。

「そういうときはやっぱり、泣きますよね。自分の判断はどうだったのか、無理をすればよかったのか…とか。でも自然って私たちはコントロールできないので、むしろ自然を見て自分たちが合わせていく生き方でないと。農家をやりたいのなら自分が合わせるのが筋かなと思っています」

変えられないのは、自然だけではない。

思いを同じくする生産者とともに開いている八ヶ岳マルシェ。農家を始めて間もない時期に思い立ってすぐ実行に移し、地元ではすっかり定着した。コンセプトは「人と人、物と物がつながる場」。それぞれのこだわりとマインドを持った生産者と消費者が集い、コミュニティーを形成してきた。

立ち上げから現在まで続いている運営メンバーは自分だけ。もちろん人間が集まれば、良いことばかりではないのも自然の成り行きだ。意見の食い違いやトラブルも受け入れて、ポジティブなエネルギーに変換する。他人の考え方を変えよう――という発想にはならない。

「他人を変えるのはとても大変だしおこがましいから、自分を変えた方が早いんですよね。いい意味であきらめて受け入れて、前を向く方法を考えて、相手とより良い関係で続けられるようにした方が自分も相手も楽だと思います」という。自然を相手にする農家たるもの、自分を変える心のスイッチは常にある。ならば、ためらわずそれを押せばいい。

「食べることは生きること」 原動力となる信条

ただ、譲れないものはもちろんある。
「食べることは生きること」という信念だ。

その思いは、実体験から徐々に輪郭が鮮明になってきた。地元の高校を卒業した後、和歌山県の大学へ進学。その地で職も得た。昼間は事務仕事をし、夜はダイニングバーで接客。睡眠時間は1日3時間あればいい方で、もちろん食べるものも気にしない。深夜に脂っこい食事を摂って、好きなアルコールも好きなだけ。いくら若いとはいえ、体を壊すのは必然の成り行きだった。

故郷の原村に帰って飲食店で接客をしていたとき、再び体を壊した。「そのときに実家を手伝いました。農家の子どもって親の大変な姿を見ているからだいたい農家をやりたがらないし、親もやらせたがらないんです。でもこのレベルまでやらなくても自分の好きなことをやろうかなと」。ここに至って、農家の道が開けた。

体を酷使して倒れた経験から、食べものへの意識もおのずと高まった。「いいものを食べないと健康ではいられない。体をおかしくしてから気づいたんです」。それは農家の営みとも直結する。結婚して子どもに恵まれた数年後、その思いはさらに強くなる。「母乳を通じてダイレクトに子どもに行くから、やっぱり体を整えたいと思いました」と振り返る。

それだけではなかった。
夫に病気が見つかり、それを機に改めて食生活を見直したのだという。

「自分にできることをとにかく考えました。白く精製されたものは減らして、調味料はなるべく無添加。豆がない時期は肉も魚も食べるけど、できるだけ菜食に近い状態で満足感を出すようにしました。再発の可能性もある中で5〜10年経ったとき、何で体を作っているか――と考えたら、やはり余計なものを入れないシンプルな生活をしていようと思いました」

余分なものを取り除く。
食べて、生きる。
人生も食生活も、シンプルでいい。
大切なのは、良質な食べものを体内に取り込むこと。

生産性とテンションを高める良質なアウトドアギア

そして、あらためて大事だと思うことがある。

良質な食べもので作られた体に、良質なギアをまとうことだ。天候にかかわらず外仕事にいそしむ農家にとって、ウエアもシューズも高機能で高耐久なら理想的。もともと気にするタイプではなかったが、アウトドアギアを好む夫に触発されてこだわるようになったのだという。夫ももっぱら日常の作業に重宝している。

たっぷり汗をかく夏は、透湿性や速乾性を重視してチョイス。雨が降れば、レインウエアに身を包みながら農作業に精を出す。そして真価を発揮するのは冬だ。標高1000メートル超で、寒さは半端ではない。たとえば精米機を回す作業場の体感温度は“冷凍庫並み”のレベル。ただ、ギアの機能性が進化したことで、ウエアの事情はガラリと変わった。

「昔はとにかく枚数を着て、重ね着でモコモコしながら学校に通っていたし仕事もしていました。でも今はフィルパワーの強いダウン1枚と、厚い裏地で防寒性の高いパンツ1枚とかで済むんです。今までどうやって過ごしてきたのか忘れてしまうくらい」。そしてお気に入りのギアは体温だけでなく、テンションも高めてくれる。

たっぷり汗をかく夏は、透湿性や速乾性を重視してチョイス。雨が降れば、レインウエアに身を包みながら農作業に精を出す。そして真価を発揮するのは冬だ。標高1000メートル超で、寒さは半端ではない。たとえば精米機を回す作業場の体感温度は“冷凍庫並み”のレベル。ただ、ギアの機能性が進化したことで、ウエアの事情はガラリと変わった。

「昔はとにかく枚数を着て、重ね着でモコモコしながら学校に通っていたし仕事もしていました。でも今はフィルパワーの強いダウン1枚と、厚い裏地で防寒性の高いパンツ1枚とかで済むんです。今までどうやって過ごしてきたのか忘れてしまうくらい」。そしてお気に入りのギアは体温だけでなく、テンションも高めてくれる。

そうやって毎年、生まれ育った父祖の地に種をまく。苗を育て、実りを分け与えて糧とする。子育てと両立しながらのマルチタスクな日常を、丁寧に織り上げていく。他ならぬ自分の意志で、豊かな自然に五感を刺激されながら。

「自然の移り変わりを肌で感じて生きていけて、さらにそれを仕事としてできる。とても幸せで贅沢なことだと思います。土から離れては生きていけないし、自然がないなんて考えられません」

思い通りに晴れてはくれないし、思い通りに雨も降ってはくれない。夫は病気を患ったし、八ヶ岳マルシェも全てが順風満帆だったわけではない。それでもこの地でOutdoorを享受する毎日は、一点の曇りもなく“思い通り”なのだ。

富士見 森のオフィス

取材協力: 富士見 森のオフィス

八ヶ岳の麓、長野県富士見町で2015年末にオープンしたコワーキングスペース。
元大学の保養所を改装した木造施設には、コワーキングスペース、個室オフィス、食堂・キッチンを備え、敷地内には宿泊棟やキャンプサイトも併設されている。
町への移住促進を目的に設立された同施設には、都心からの移住者や二拠点居住者などが集まり、繋がりの中から様々なプロジェクトが生まれ、これからの新しい働き方を体現する場として注目を集めている。

https://www.morino-office.com

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