Life with L.L.Bean
L.L.Beanのある暮らし
ルーツの地と地球の裏側、世界が教えてくれた料理人の社会貢献
料理人 太田哲雄
浅間山麓の名水として知られる「弁天の清水」。軽井沢にあるレストラン、『ラ・カーサ・ディ・テツオ オオタ』オーナーシェフの太田哲雄さんは、自身の店から40分ほどの距離にあるここへ、いつも湧き水を汲みにやって来る。毎度繰り広げられる行為なのだろう。ごく自然に一礼し汲み場脇にある賽銭箱へお金を入れると、水筒に汲んだ水を美味しそうに口に運んだ。「軽井沢周辺の水は硬水なんですが、ここの水は軟水。だから料理によって適した水を使い分けているんです」と言う。
社会貢献に繋がっていくアイデンティティー
彼の料理人としてのキャリアはとてもユニークでダイナミックだ。若くして海外に渡り、スペインの伝説の店『エル・ブジ』をはじめ、イタリアやペルーの名店で経験を積んだ後に帰国。東京で開いたレストランはソフトオープンの段階ですでに予約困難店となる人気ぶりだったが、そこからわずか2年で現在の軽井沢へと移り、小さな一軒家レストランを開業した。
「世界の一流といわれるシェフは皆、社会の一員としてどうあるべきか、ということを必ず念頭においていて、その鍵となるのが自身のアイデンティティーなんです。自分のルーツはどこにありそれに対しどのような社会貢献をしているのか、ということをとても大切にしています」
太田シェフの出身は、長野県の白馬村。レストランでは、自身が生まれ育った長野の食材に特化した料理を提供していて、主な営業は春と秋。春は山菜を、秋はきのこを自ら山奥に入り採集してくる。
「私自身、長野の食の恵みをいただきながら育ってきましたが、店でも長野の食材を料理にして提供しています。では長野の恵みとは何かと考えると、やはりそれは山の産物が中心となりますね。ですから自ずと春の山菜、秋のきのこがメインとなった料理になります。長野は海なし県ですが、なければないで工夫をします。取り寄せることがすべてではないよ、ということは世界(での経験)が教えてくれました。もちろん野菜も肉も使いますが、そのときに心がけているのは生産者の人柄と地域の不均衡のきっかけを作らないこと。ですから今年、郷土料理に使われる凍み大根を地域の生産量全部仕入れ、その料理を出す店をレストランの隣につくりました」
長野の寒冷な気候の中つくられる保存食材の凍み大根。太田さんは地元近くの産地・小川村に電話で問い合わせ、集落の収穫を全部引き受けることにした。これも自身のアイデンティティーをベースにした社会への貢献のひとつなのだ。
また太田さんは、生産者とのコミュニケーションもとても大切にしている。菅平高原でダボス牧場を営む伊藤 純さんはそんなひとりで「彼の人柄が、肉の味に出ていると思います」と言う。
「私の牧場では、農薬を散布せずに牧草を育てています。また肥料は有機肥料ですし、よく運動もさせています。飼料ではなく有機の牧草を喰み、よく運動させながら育てると、体躯は小さくなるので経営効率という面でいうといいとは言えません。けれどストレス少なく健康的な牛や羊は、やはり味が違いますよ」と伊藤さん。北アルプスを一望する標高1700メートルほどの澄んだ空気の中に身をおきながら、経済効率より牛や羊の健やかな成長と環境について語る。そんな伊藤さんの話に、太田さんは熱心に耳を傾けるのだ。
アマゾンカカオを通して見えた様々な問題
自分のルーツやアイデンティティーを大切に、生まれ育った長野の食材をレストランで提供している太田さんには、もうひとつの顔がある。『アマゾンカカオ』と名付けたペルー、アマゾン川流域で栽培されているカカオの輸入業とそれを使用したチョコレートやポップコーン、クッキーなどの製造販売である。国内の多くの有名レストランで彼のカカオが美しいコースの一品となっているし、お菓子の数々はイベントに参加すれば完売の人気ぶりである。さらには『アマゾンの料理人』の名で書籍も上梓している。
「カカオがどこでどう採られているか、という現状を知る人は多くありません。またチョコレートの原料であるカカオの生産は、労働搾取や児童労働の問題をはらんでいますし、アマゾン川流域は森林の伐採などにより環境破壊が深刻化しています。そんな現状を知るきっかけや問題解決の一助になればと活動をしています。日本のシェフをアマゾンに連れて行ったりもしているんですよ」
標高のある地元の山に分け入り食材を採取したり、時にはアマゾンの密林を旅する太田さんにとって、自然の厳しさは十分理解するところ。だからこそ、その中に身をおく際の相棒選びは重要となってくる。またアウトドアライフを楽しむこと、その大切さも熟知しているようだ。
自然環境に柔軟に対応できるウエア
「やはりアウトドアアイテムでは機能性を重要視していますね。このL.L.Beanのダウンジャケットはとても軽いけれど暖かくて、機能性に優れています。アウトドアに持っていくのにはぴったりですよね。山は気温の変化も激しいですから、気温が下がってきたらパッと羽織れる、暑くなったら脱いでバッグの中に入れても荷物として負担にならないというのは理想的だと思います。
両親がキャンプに連れて行ってくれたりしてアウトドア、つまり自然の中に身をおくことの楽しみを、子どもの頃から体験していました。今では辺境の地にも足を運びますが、そんなことをしなくても山の入口でアウトドアライフを楽しめば、自然を身近に感じることができる。そこがいいですよね。あまりに奥地に踏み込んでしまうとそれはもうサバイバルになってしまいますから。また、自然の中に身をおくと五感が研ぎ澄まされていくのがわかると思うんです。春なら桜や草木の芽吹きの香りがある。夏や秋、冬にも季節で空気が変わります。そんな微細な変化を感じられるアウトドアでは、五感を使い料理を楽しんでほしい。それは都会のビルの屋上では得られない体験ですから」
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