AERA STYLE MAGAZINE × L.L.Bean
Life with L.L.Bean
L.L.Beanのある暮らし
“海”がつないでくれた人と暮らし、感謝を込めたゴミ拾い
ビーチ&リバークリーン活動家 カフェ&ヘアギャラリーオーナー 諸橋幸太
「計画当初は、周りからも“うまくいかない”という声があったと聞きました」。カフェギャラリーとヘアサロンの複合施設『BEACH TREE』を経営する諸橋幸太さんは、スタッフが忙しそうに動く店内を眺めながらそう話す。
この日もタイから帰ってきたばかりだという諸橋さん。海外と日本を行き来しながら、経営者として、またサーフィンと自然を愛する人として環境問題にも積極的にアクションを起こすなど、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍である。その原動力となっているのは……。
思い出の場所に仲間の集まる場所を作りたい。
本厚木駅から徒歩5分ほど。にぎやかな通り沿いに諸橋さんがBEACH TREEをスタートさせたのが8年前になる。神奈川県秦野市出身の諸橋さんにとって、ここは青春の思い出がたくさん詰まった場所だった。
「本厚木は僕らが若いときは本当に活気があったんです。大学やファッションビルもあって人があふれていた。そんななかでお洒落でたくさん影響を受けたお店や先輩たちと出会えたのに、今はマンションが立ち並び、当時の活気はなくなってしまった。もう一度、人が集まれる場所が作れたらと思ったんです。また同時に、自分自身にも拠点となる存在が欲しかったんだと思います」
もともとゼロイチが好き、という諸橋さんは周囲の不安をよそにBEACH TREEをオープン。極力リユースの素材を使ってほしいとリクエストを出し、店内のインテリアは廃材などを利用したテーブルやソファ、カウンターで構成されている。これもロケーション同様、彼自身のバックグラウンドに端を発しているという。
「10代後半からサーフィンを始めましたが、サーファーにとってビーチクリーンはあたりまえに行うもの、という意識があります。また、子どもの頃にボーイスカウトの活動もやっていたこともあり、自分の遊び場を自分たちで整えていくというのは自然な行為だったんですね。そんな中、『人が集う場を作る』として自分に何がやれるかと考えた際、環境に負担の大きい新材ではなく、極力リユースで使えるものは長く使う……というコンセプトが生まれたんです」
今の自分を育ててくれた自然への恩返し
さらに近年は、海だけでなく川をきれいにしたいと活動の範囲を積極的に広げている。
「ビーチクリーンは認知度がずいぶん上がっていますが、リバークリーンはまだまだ知られていません。僕もリバークリーンに意識を向けたのは、ここ数年です。川と海はつながっていますし、川って信じられないようなゴミが流れてきたりするんですよ。そういうことも知ってもらいたいと思って活動を続けています。とはいえ、難しいことはしていなくて、目についたゴミをできる範囲で拾うのが基本です。さらに仲間と楽しくできればいいなと思っています。そういう余裕も、年齢を重ねて生まれるようになりました」
現在は地元に流れる金目川をベースに活動をしているが、過去にはファッションモデルというキャリアも持つ自身の顔を生かして企業に声をかけ、東京の二子玉川の河川敷でリバークリーンのイベントを開催したこともある。軽やかな行動力と発想力で活躍する諸橋さん。多彩な顔の根底にあるのは「恩返ししたい」という思いなのだとか。
「サーフィンと出合っていなかったらモデルの道も開けませんでした。また自分はひとりっ子だったこともあり、多くの地元の先輩たちにいろいろ教えてもらったし、助けてもらいました。海や地元などに、今度は自分が恩返しをしていきたいと思っています。それがリバークリーンや店の経営につながったところはありますね。
サーフィンをやるようになって、海という存在は、人生ととても似ていると気づかされました。いい波というチャンスが来たとき、それに乗るためにはやはり実力が必要です。そのいつかのために鍛錬を怠らないのも大事ですし、経営は従業員やお客さまなど相手あって成り立ちますが、自分の思いどおりになるわけではありません。相手あっての自分なんだという考え方をはじめ、海から人生のいろいろを教えてもらったと思います。また、人生も波もいいこともあればそうでないものもある。ああ、一緒だなと思うんです」
共通する“循環”というキーワード
若かりし頃、出合ったサーフィン、海、そして先輩たちから得た知見。それを自分ができる恩返しという形で還元していきたいと考える諸橋さんの活動は、まるでしりとりのようにキーワードでつながり巡っている。その循環する様は、彼が持つL.L.Beanのアイテムがひとつの象徴ともなるようだ。
「L.L.Beanは僕が子どものころよりずっと前から続いているブランドですが、先日そのアイテムの多様さにびっくりしました。スーツ必須以外のシーンでしたら、海も川も街も旅も、僕のライフスタイル全般をカバーしてくれるな、と。自分も中学生のときのネルシャツを今でも持っています。いいものや気に入ったものは、たとえ着る機会が激減しても持っていたい性分なんですよ。ネルシャツも、年月は経っていても状態はいいからまた着れるじゃん、と思うとずっと手元に残しておきたくなる。質はいいしトレンドは時を経て戻ってくるので、次の機会に生かそうと今でも大事に持っています。そういう意味ではこのアイテムは循環しているんでしょうね。自分の活動に関しては循環を意識しているわけではないですが、やはりやってくる波には、ちゃんと乗っていきたいと思っています」
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