AERA STYLE MAGAZINE × L.L.Bean
Life with L.L.Bean
L.L.Beanのある暮らし
築100年の古民家をアップデート、未来へ繋げるリノベーション
インテリアデザイナー 若松義秀
ひとり娘の小学校入学に合わせて、軽井沢にほど近い南佐久郡佐久穂町に移り住んだインテリアデザイナーの若松義秀さん。仕事場である東京と行き来しながら、築100年の古民家を「楽しむ」ファーストで改装し、自分たち家族の暮らしに合わせ少しずつアップデートしている。
自然との距離が近いライフスタイル。それは彼に変化というよりも回帰をうながしているようだ。
「楽しむこと」が詰め込まれた空間
「このソファの真ん中がベストですよ」
もとは養蚕を行っていたという築100年の古民家。若松邸の広いリビングルームでひときわ存在感があるのが、アナログのサウンドシステムだ。大きなスピーカーから流れる音楽を堪能するなら、その正面に位置するソファがベスポジなのだと若松さんはアドバイスする。
「仕事場と合わせると3000枚ほど」というコレクションをはじめ、若松家は妻のマキさんと共通の趣味という音楽に彩られている。ひとり娘の寧々ちゃんはベースとピアノを習い、小学校ではバンドを組んでいる。2階からはベースを爪弾き、鍵盤を叩く音が響くこともあるし、彼女の親友ともいうべき愛犬・シーナは“シーナ&ロケッツ”からもらった名だとか。聞けば若松さんが公私にわたって大事にしていることは「楽しむこと」。サウンドクリエイターにオーダーした真空管のサウンドシステムから流れる絶品の音はじめ、リビングの中央にある薪ストーブで暖をとりながら本を読んだり、愛犬と戯れたり、古くから人々が行ってきた小さな喜びが、若松邸では健在である。
もともとあった古材を活用した家造り
「ここには、娘の小学校入学を期に越してきました。物件は空き家バンクで探したのですが、現地で見たのはここだけ。即決でしたね。古民家をリノベーションして暮らすことはひとつのブームとなっていますが、古い建築物は建材含め今よりも格段に質が良い。インテリアデザインのプロとして、そんな質の良いものを使わない手はないだろうと思っています」
冬はマイナス10度を下回るという気候に合わせ、しっかりとした断熱材やトリプルガラスの窓を導入。現代の利便性も取り入れながら、堅牢な柱や梁をはじめ随所に100年の面影を残している。
「キッチンや玄関には、ここにあった囲炉裏で使われていた石材を採用したり、ダイニングの棚も、もともとあったものをリフォームして使っています。情報を手に入れることが容易くなった今、お金をかければ良い空間は作れると思います。けれどこの建物にあったものをライフスタイルに合わせ工夫しながら再利用するのは、ここでしかできないことです。築100年、使われている木材の樹齢を考えると200年ほどの歴史が内包されていることになります。そんな家を邪険にはできないなと思うんです」
“新しいこと”が全てではない 、再生させる楽しみ
若松さんはこの家で金曜日から月曜まで暮らし、週の半ばは東京に移動という二拠点を続け4年目。偶然にもコロナウイルスのパンデミックと重なる期間で、多くの人が生活のプライオリティを見直してきたと同時に、価値観の変化が訪れた人もまた少なくないだろう。
「友人から“勝ち組”だなんて言われることもあります(笑)。それは、もしかしたらコロナによっての価値観の変化もあるのかも知れません。けれど自分はもとからこういう古くても価値あるものを大切にしたいと思うタイプでした。最新のものが一番良いとも思っていませんでしたし、次から次へと新しいものを作り続けるのをよしとも思わない。ですから、今のように自分たちの好みに合わせて、古民家を少しずつ変えていけるのは楽しいの一言。知恵や経験を次に繋げてアップデートしていく楽しみがあります。それは賃貸暮らしでは手に入れられなかった喜びです」
「友人から“勝ち組”だなんて言われることもあります(笑)。それは、もしかしたらコロナによっての価値観の変化もあるのかも知れません。けれど自分はもとからこういう古くても価値あるものを大切にしたいと思うタイプでした。最新のものが一番良いとも思っていませんでしたし、次から次へと新しいものを作り続けるのをよしとも思わない。ですから、今のように自分たちの好みに合わせて、古民家を少しずつ変えていけるのは楽しいの一言。知恵や経験を次に繋げてアップデートしていく楽しみがあります。それは賃貸暮らしでは手に入れられなかった喜びです」
積み重ねてきた時間が生み出す価値
良いものとともに、時間をかけて楽しみを生み出していく。そんなライフスタイルは、L.L.Beanのフィロソフィーと相通じるものもあるようだ。
「実は妻が幼い頃からL.L.Beanのファンで、小学生のときにアメリカの通販で購入したフリースを今でも愛用しています。時間や経験が蓄積されていく家造りの話を先ほどしましたが、L.L.Beanの長く良いものを作り続けてきたという蓄積も、間違いなく長く使えるモノづくりに生かされていると思います。そしてそれはユーザーの安心感に繋がっていくんじゃないですかね」
若松さんのノウハウを蓄積してアップデートする暮らしは、家を出てその範囲を広げているようだ。準備期間を経て昨年は田んぼ、今年からは畑づくりもスタートさせたという。
「妻が主導でやっていますが、自然と近い距離でいるとあたりまえだと頭でわかっていたことを実感できるようになります。例えば種をまいたら芽が出ます。そしてそこに至るには複雑な要素が絡み合って生じるんだということを感じられたり……。また80歳を過ぎたおじいちゃんおばあちゃんが、このあたりでは芝刈り機を振り回しているんですよ。人間の体は動かしていないと錆びてしまうというのも、あたりまえのことですよね。知っていたようで実感できていなかったことを、この里山での暮らしは教えてくれていると思います」
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