「マグニフ」 店主 中武康法さん

神田神保町での古書店勤務を経て、2009年、同すずらん通りに雑誌メインの古書店「マグニフ」をオープン。メンズファッション誌に強く、ファッション関係者からも厚い信頼を寄せられている。昨今では、アパレルショップや百貨店でのイベント協力など、活動の幅を広げている。

Instagram:@magnif_zinebocho

中武さんがよく使うのはミディアムサイズのこちらの3色。コーディネートに取り入れやすいベーシックカラーが好きだという。

使って汚して“育てる”バッグ

たくさんの『ボート・アンド・トート』をお持ちですが、このバッグと出会ったキッカケを教えてください。

古書の買い取りを希望される、初老の紳士が持っていらした『ボート・アンド・トート』の格好よさに衝撃を受けたのが最初です。お店をオープンして間もない、10数年前の話ですね。バッグのなかから取り出したのは、1970年代に発売された『メイド・イン・U.S.A. カタログ』。それこそメイン州にあるエル・エル・ビーンの旗艦店を日本に紹介したような伝説の雑誌です。まさにその時代に購入されたんじゃないかと思われるそのバッグは、ハンドルを色とりどりの刺繍で繕っていて、ボディは使い込まれてはいるもののまだまだ頑丈で、見たこともないオーラをまとっていたのを憶えています。

中武さんがよく使うのはミディアムサイズのこちらの3色。コーディネートに取り入れやすいベーシックカラーが好きだという。

『ボート・アンド・トート』を購入したのをキッカケにエル・エル・ビーン党に。この日はシャツとシューズもエル・エル・ビーン。サイズバリエーションも多いので、中武さんにフィットする服が多いという。

それ以来、『ボート・アンド・トート』にハマったんですね。

そのお客さんのバッグに憧れて、すぐ吉祥寺のエル・エル・ビーンのショップに買いに行きました。以来、『ボート・アンド・トート』を毎日のように使っています。愛着を持ってバッグを”育てる”という感覚が、クラシックを愛する者としてたまらないんですよね。新品の状態で使うのはちょっと気恥ずかしいけど、使い込むほどに格好よくなっていくのが『ボート・アンド・トート』のロマンチックなところですね。当時購入したトートもご覧のとおりいい感じに育って、雰囲気が出てきました。

どんなシチュエーションで使うことが多いんですか?

古書を買い取りに行くときは必ず『ボート・アンド・トート』のミディアムサイズをいくつかクルマに積んでいきます。基本的にはプラスチックのコンテナに収納するんですが、定型外の大きいサイズの本なんかはトートのほうが運びやすい。重い古書をパンパンに詰め込んでもまったく型崩れしないし、穴ひとつ開きません。古きよきアメリカ製らしい、その頑丈さには驚かされます。あと、家族でキャンプに行くのが趣味なので、アウトドアでもよく使っています。汚れてもOK、むしろ汚れたほうがサマになるバッグなんて『ボート・アンド・トート』くらいですよね。

24オンスのキャンバス地に頑丈なステッチを施しているため、重い古書をたくさん入れてもビクともしない。ちなみに、エル・エル・ビーンの昔のカタログや古書は人気でなかなか出回らないとか。

「マグニフ」で扱っている古書は、主にメンズファッション誌のバックナンバー。主に1970~90年代の雑誌がずらりと並ぶ。近頃は、海外のお客さんも多いという。

中武さんが考える 『ボート・アンド・トート』の魅力とは何ですか?

『ボート・アンド・トート』は今年80周年を迎えるそうですね。クラシックなモノが好きな私にとって、歴史のあるモノには特別な価値があると思います。基本的なデザインをほとんど変えず、現在までMade in USAを貫いているところも素晴らしい。これからも変わらずに、90年、100年と歴史を刻んでほしいですね。

ファッションインフルエンサー kinokoさん

神戸と東京の二拠点生活を送りながら、YouTube動画チャンネル「kinokoさん」の配信や広告モデル、ラジオ番組へのレギュラー出演、ブランドとのコラボアイテムを手掛けるなどマルチに活躍。そのマニッシュな雰囲気や、定番アイテムを取り入れたセンスのある着こなしは幅広い層から支持される。自身のスタイルブック『好きな服だけで、おしゃれにみせる』(ポプラ社)も好評発売中。

Instagram:@kinoooooooko3

自然体でいられるこのバッグと
思い出を共有していきたい

数年前に出会った『ボート・アンド・トート』にひと目惚れしたと伺いました。どういうところに惹かれましたか?

古着の使い込まれたクタッとした感じが好きで、コーディネートに古着を取り入れることが多いのですが、まさにこのトートも同じ。帆布らしく育っていく味わいや持っているときの安心感に、自分の生活に寄り添ってくれるような親しみやすさを抱きました。

また初めこそカジュアルなイメージが強かったのですが、購入後に改めて気付いたのがビジネスシーンでも使えるという点。打ち合わせの際にテーラードジャケットを羽織るなどカチッっとした装いをするのですが、そんなときも『ボート・アンド・トート』なら自然と馴染んでくれる。主張しすぎないシンプルさががいいですよね。おかげでシーンを限らず重宝しています。

古着のような味が増していく一方、おしゃれに楽しむうえで最低限の清潔感も保ちたい。kinokoさんが取り入れているケア方法などあれば教えてください。

今日みたいに小雨程度なら気にせず使えるし、ガシガシ使っても罪悪感がない。古着のように使用感が味に変わるのも魅力のひとつですが、あまりに汚れが目立つ状態はいただけません。とはいえ丸洗いは面倒ですし、型崩れも気になります。そのため私はよく布に石鹸を泡立てて拭き取ったり、消しゴムで擦ったりします。レザーのお手入れよりずっと手軽ですし、意外と汚れも取れるのでオススメです。

今日訪れた高円寺が東京で一番好きな街だそうですね。

東京に住んでいた頃は、それこそ古着を探しに行ったり、懇意にしていた居酒屋に通ったりと週に一度は高円寺に遊びに来ていましたね。上京したての頃の私にとって、東京というとキラキラしていて最先端で、そして少し怖い場所でした。一方で、高円寺の個人商店が並んで活気あふれる雰囲気は地元に似ていて、何というかツンケンしていない。まるでマイホームのような居心地のよさを感じるんです。

私が『ボート・アンド・トート』に惹かれるのも、根底にそうした性質があるからじゃないかなと。変に気取っていなくて自然体でいられる、いい意味で“地元感のある”バッグだから、私の暮らしや装いにしっくりくるのだと思っています。

動画やSNS用の撮影機材、移動時間に楽しむゲーム機は欠かせないというkinokoさん。「スモールサイズでコンパクトに持ち運べるのに、これだけ荷物を詰め込んでもまだスペースに余裕があるのが嬉しい。」

ラージサイズのジップ・トップモデルも愛用。「着替えの服がまるっと入りますし、キャリーケースの上に乗せて運べば神戸⇄東京間の移動もスムーズです。ユーズドショップで購入しましたが、キャシーの名で入った刺繍が可愛くてお気に入りです。」

そんな自然体でおしゃれを楽しむkinokoさんだからこそ、憧れる人も多いと思います。最後に大切にされているモノ選びのルールがあれば教えてください。

以前までは見た目の可愛さだけで選んでいた部分がありましたが、より着心地のよさや長持ちするいいモノを選ぶようになりました。

使っていくほど味が出てデザインは廃れず、そして頑丈な『ボート・アンド・トート』のように、30代、40代と歳を重ねても思い出を一緒に、ともに歩んでいけるようないいモノであるかどうか。そんな視点を大切にしたいなと思います。

「大島清吉商店」「コーバ」店主 大島崇嗣さん

茨城県古河で大正初期から続く老舗の製茶問屋「大島清吉商店」の四代目。地元で愛されるその家業の傍ら、お茶の加工場をリノベして始めたキャンプギアショップ「CO-BA(コーバ)」には遠方から足を運ぶファンも多数。フィールドで日本茶を味わう、アウトドアの新しい楽しみ方を提案する。

Instagram:@ooshimaen

あまりにも使い勝手がよくて増える一方(笑)

キャンプ趣味が高じてショップまで開かれたそうですね。エル・エル・ビーンのアイテムもたくさん愛用中だと伺いました。

キャンプを始めたのは2010年頃ですが、エル・エル・ビーンとの出会いは30年以上も前の大学時代まで遡ります。まだブランドが日本に上陸していなかった頃です。友人が本国のメールオーダーカタログを持っていて、仲間同士で個人輸入しました。当時はスキーをやっていたので、カタディンロゴの入ったスキーケース、あとは他社製品もセレクトされていてスミスのゴーグルを買いましたね。その後しばらくして東京の自由が丘に日本1号店がオープンして、スキーブーツを入れるために大きいボストンバッグを購入した思い出があります。

ただ卒業して会社勤めをして以降は、仕事の忙しさから雪山へ行くことも減り、アクティブな遊びもほとんどできなくなって。それが一転、結婚して子どもが生まれたのを機に、家族みんなで楽しめるキャンプをするようになったんです。すると、エル・エル・ビーンに胸をトキめかせていた若かりし日の記憶が蘇ってきた。まずは息子と娘に折りたたみ式のチェア、加えて寝袋に装着できるフリースのインナーシュラフを手に入れて、そこから徐々にスイッチが入りましたね。

今では珍しい昔のバッグやグッズもいろいろとお持ちだとか。

もともとアメカジや古着が好きなので、ヴィンテージでも探すようになりました。あるとき行きつけセレクトショップに、ほぼデッドストックの1980年代の『ボート・アンド・トート』が飾られていて、店長にお願いして売っていただいたんです。それで完全に火が点いて、アレコレと買い漁るように。ハマると徹底的に掘り下げる性格なので。なかでも『ボート・アンド・トート』は、カラーやサイズ、仕様の違いなどバリエーションが豊富だから探し甲斐がある。並行して、現行品でも欲しいモデルが次々にリリースされるので、新旧を問わず常にチェックしています。

入れるキャンプ道具に応じて、サイズの異なる複数の『ボート・アンド・トート』を使い分けている。「頑丈なので重いギアを入れてもヘッチャラ。地面に置いても倒れないから荷物を出し入れしやすく、汚れても洗えるのが助かります。」

とはいえ、自分はコレクターではありません。大切に保管したり、飾って眺めたりはせず、どれも躊躇なく使い倒しています。『ボート・アンド・トート』は丁寧にキレイに扱うんじゃなく、汚れてクタクタになってからが本領を発揮すると思っています。また、作りがシンプルゆえに入れるモノが限定されないので、容量の異なるタイプを揃えておくと何かと重宝します。で、いつの間にかこんなに増えてしまいました(笑)。

キャンプのほか、古河市内に3店舗を展開する日本茶専門店の業務では“緑茶色”のトリムカラーを使用。「バッグいっぱいに商品を詰め込んで、各店に在庫を補充して回ります。これだけの量だと結構重いので、丈夫なボート・アンド・トートが頼りになるんです。」

そこまで『ボート・アンド・トート』に惹かれる魅力は?

タフなことはもちろん、たくさん荷物が入るところです。自立するのもありがたい。最近はギアをハードケースに収納するキャンパーも多いけど、『ボート・アンド・トート』は丈夫といっても布なので、それなりに形状を変えられる。だからクルマに目一杯まで道具を積み込んでも、ちょっとした隙間に難なく収まっちゃう。とにかく実用性が抜群に高い!
そのうえファッションアイテムとしても格好いいので、持ち歩いていても見映えがよく、デイリーユースでもサマになるんですよね。

とりわけ僕はMade in USAに目がない世代だから、本拠地であるメイン州での生産を頑なに守り続けている点にもグッとくる。そこにブランドの強い信念や底力を感じるし、アメリカの良心だとリスペクトしています。

キャンプのほか、古河市内に3店舗を展開する日本茶専門店の業務では“緑茶色”のトリムカラーを使用。「バッグいっぱいに商品を詰め込んで、各店に在庫を補充して回ります。これだけの量だと結構重いので、丈夫なボート・アンド・トートが頼りになるんです。」

フォトグラファー 田中 舞さん

人物、料理、自然などを被写体に、その場の空気感まで伝わってくるような力強くも優しい写真が魅力。ファッションやアウトドアブランドのルック、雑誌やテレビ番組など幅広く活躍するほか、写真家として「対話」をテーマに作品を発表し続けている。一児の母として子育てにも邁進中。

Instagram:@maitanakaphotograph

子どもの遊び場をクリエイトする大切なツールです

もともとはご主人が『ボート・アンド・トート』を愛用されていたそうですね。

彼はファッション業界で働いていたこともあり、モノへのこだわりが強く、とくにオーセンティックなアイテムをこよなく愛する人。私がトートバッグを買おうとしていたとき、それなら『ボート・アンド・トート』一択だと説得してきたんです。バックボーンがしっかりあるアイテムは、いつの時代も関係なく持てるし間違いないから、と。確かに彼が長年愛用していたバッグはもうボロボロの状態なのに、妙に格好よかった。

それに私自身アメカジの服が好きなので、Made in USAらしい骨太な雰囲気はちょうどいいと思いました。購入してからも、朝起きてどのバッグを合わせようかと悩む必要がなく、手に取るだけでコーディネートに馴染むので助かっています。

フォトグラファーとしてご活躍されていますが、撮影の現場に持っていくこともありますか?

撮影現場にも必ず持っていきます。仕事道具、それこそカメラケースなんかもガサっと入れられるし、アウトドアフィールドでの撮影でも気兼ねなくその辺りに置いておける。現場では目の前の被写体に全集中するため、雑に扱っても問題ないタフさは私の性に合っていると思います。そういう意味では、ネイビーのソリッドカラーはいい選択でした。より汚れが気にならないですから。

あとは、キャンプシーンの撮影をすることが多いのですが、スタイリングのプロップとしても重宝しています。ラフなのにそこにあるだけで絵になるし、誰もが知っている定番という安心感も頼れる理由ですね。

昨年からは母として子育ても楽しんでおられます。仕事と両立するために、またお子さまと過ごす時間のなかで大切にしていることはありますか?

子どもといるときは母として、仕事をしているときは一人の人間として本来の自分らしくがんばりたい。私にとっては、保育園の先生や夫と連携しながら育児と仕事を両立できている状態こそが、ストレスなく子どもと接せられる最大の秘訣だと思っています。

また職業柄、遠方のフィールドへ行って長時間撮影することが多く、そんなときは子どもを現場に連れて行かなくてはならないし、週末の家族の時間もほとんどがロケハンになりがち。親の都合で振り回してしまって申し訳ない気持ちもありますが、逆にいろんな場所で人や自然に触れさせてあげられることは、子どもの感性を育むいい機会だと思っています。

親にとっての仕事場が、子どもにとっての遊び場になる。素敵ですね。

だからどこへ行ってもすぐにピクニックが楽しめるよう、トートバッグにはグランドシート、子どもの遊び道具や着替え、そして自然のなかで遊んでいる姿を記録するためのフィルムカメラを常備しています。どれだけ積め込んでもスペースに余裕があるのはありがたい。外からはパンパンに見えないスマートさも魅力ですね。

「仕事ではデジタルカメラが主流だからこそ、家族との一瞬一瞬の思い出はフィルムで記録したい。かなり大きくて重いですが、必ず持ち運びます。」

最近は自然を眺めながら台湾茶でほっと一息つくのがマイブームだとか。茶器やボトルもバッグに入れて持って来るそう。

このピクニックセットを車に積んでおきさえすれば、どんな場所でも子どもとの時間を思いきり楽しめる。『ボート・アンド・トート』は仕事とプライベートの境界線が曖昧な私たち親子にとって、遊び場をクリエイトする大切なツールだと思っています。

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