Boat and Tote #1

フリーランスエディター
岡本546Okamoto 546

約20年前の大学生の頃から、古いボート・アンド・トート(以下、ビーントート)の佇まいに魅せられコツコツと集めてきました。およそ70年代から90年代に掛けて生産された代物は、2000年代初期ではそこまで古くも高いものでもなく比較的安価で購入でき、そのため学生だったぼくにはコレクションするのにちょうどいいアイテムだったのです。ここ10年くらいは人気の高まりによる価格の高騰からアイテムが増えてないのが実情。デラックストートのネイビーベースのレッドをいつか手に入れてコンプリートしたいと思っていましたが、気がつくと手の届かない値段になってしまいました。

ビーントートにはレザーハンドルやペイント入りなどさまざまなタイプがあって、ディテールにこだわって集めているコレクターもいれば、古いもの全般で集めているコレクターもいます。ぼくはというと「Lサイズ」「青ステッチのマチ付き」「ショートハンドル」という比較的スタンダードなタイプを集めていました。ですので「New Pack Boat and Tote Bag」というリュックのように背負うことも可能なビーントートは手持ちの中でも変化球。ただ一目惚れで購入したのを今でも覚えています。

集める中で必ずチェックするのがブランドタグです。ぼくが所有するビーントートには5種類のタグがあります。一般的に最古とされるのは、ハンドルの付け根部分からピラピラと覗くピスネームタグ仕様の筆記体タグです。およそ70年代と定義されています。ちなみにこの時代のトートで、古着市場でよく“パープル”と呼ばれるカラーのものを散見します。しかし、当時のカタログにパープルという色展開はなかったので、おそらく青が褪色し紫っぽくなったものが、俗称としてパープルと呼ばれるようになったのだと思います。

話を戻すと、筆記体タグの後は70年代終盤から80年代にかけて、筆記体タグと同じピスネームタグ仕様で、ブロック体のタイプが登場します。その次の世代からは現在のビーントートとほぼ同じタグの位置となりました。おおよそ80年代とされるのが、下側に切りっぱなしたかのようなギザギザが付いた通称「ギザタグ」。そのギザギザがなくなると、いよいよぼくが集めるショートハンドル&青ステッチトートの最終世代となります。これ以降、ショートハンドルの生産は終了し、それとともに両サイドの青ステッチのマチも消え、より現代的なビーントートという完成形へと近づいていくのです。

面白いのがギザタグにもビーントートの進化の変遷が見られることです。というのも同じタグの時代でありながら、トリム(ハンドルからボトム部分へと続く青、赤、緑の部位)の幅が狭いものと広いもの、2種類のデザインが存在するのです。上述したぼくが集めるタイプのビーントートの最終タグのものはトリムの間が広く、それは昨今のビーントートに通じるデザインでもあります。つまりハンドル幅が狭い=古いビーントートという認識は正しいのでしょう。その過渡期がギザタグの時期に見られるのは興味深いですね。

そしてここまで紹介したタグは4種類。最初に5種類あると述べたのですが、最後のひとつは正直“ナゾの存在”なのです。というのも自分自身が所有するこの個体でしかみたことがないタグだからです。表のトリム部分を縫い付けるためのステッチにそのまま縫い込まれた金色の筆記体タグ。古着市場に出回る筆記体タグとは明らかに異質のそれは、想像するにボート・アンド・トートがカタログに初掲載された1965年当時のそれではないかと考えています。よく見るとハンドル幅もユルいA型となっており、当時のカタログに残る絵型とも酷似しているのです。

歴史あるL.L.Beanの中にあって、1944年のビーン・アイス・キャリアを起源とするボート・アンド・トート。今年はそこを起点に80周年とされていますが、来年は純粋なボート・アンド・トートの60周年。2年連続でこの名品がフィーチャーされ、そしてさらなるイベントやキャンペーン、限定アイテムが展開されることを、いちファンとして期待しています!

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